- 泌尿器科を受診する主な症状と病気
- 頻尿(尿の回数が多い)
- 尿の勢いがない(尿勢低下)、尿が残った感じ(残尿感)がする
- 尿が漏れる(尿失禁)
- 排尿するときに痛みがある(排尿痛)
- 突然、側腹部(背部)痛や下腹部痛に伴い血尿が出現した
- 尿に血が混じる、検診で尿潜血を指摘された(血尿)
- 精液に血が混じる(血精液)
- 陰嚢や精巣(睾丸)が腫れる、痛む
- 陰茎や亀頭に発赤、痛み、かゆみ、イボがある
- 小学生になってもおねしょが続く
- 検診でPSA値が高いと指摘された
- 勃起障害(ED)、射精障害
- 男性更年期障害(Late Onset Hypogonadism:LOH症候群)
1日の排尿回数が8回以上あれば頻尿と定義されます。
特に、夜間(寝ている間に)排尿のために1回以上起き、そのことにより困っている状態を夜間頻尿と定義します。実際には夜間2-3回以上トイレに起きると睡眠や生活に支障を来し、治療の対象となります。頻尿の原因として膀胱粘膜の刺激過敏、下部尿路の通過障害や多量飲水による尿量の増加、睡眠障害などが考えられます。
予想される病気は過活動膀胱です。他には前立腺肥大症、膀胱炎(細菌性、間質性)、心因性頻尿、糖尿病や心疾患など内科疾患に伴う多尿など多岐に亘ります。
過活動膀胱を診断する場合、超音波検査などで残尿(排尿直後に膀胱に残っている尿)が少ないことを確認する必要があります。過活動膀胱と診断された場合は薬物治療(抗コリン薬やβ3受容体作動薬)が有効です。
尿が若い頃と比べて勢い良く出ない、尿が出終わるまでに時間がかかる、途中でとぎれる、排尿が終わっても残った感じがするといった症状では、下部尿路の通過障害や膀胱の収縮力の低下が疑われます。
中高年の男性では前立腺肥大症が疑われます。また前立腺肥大症の診断・治療の過程で前立腺がんが見つかることも少なくありません。前立腺肥大症の治療は、まず薬物治療(α1遮断薬、PDE5阻害薬、抗男性ホルモン、漢方薬、植物製剤など)から開始して、満足した症状改善が得られない場合は内視鏡手術をお勧めしています。(協力病院の開放病床を利用して、当院医師が手術(内視鏡的レーザー前立腺核出術:HoLEP)させて頂くことも可能です。)
前立腺の肥大は無い、前立腺肥大症の治療で改善しない場合は尿道狭窄を疑う必要があります。尿道狭窄では内視鏡手術が必要です。
また、男女にかかわらず持病に糖尿病や脊椎の病気(椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症)、脳卒中などがある方は、神経の異常により膀胱の収縮力が低下する神経因性膀胱が疑われます。神経因性膀胱の治療は、持病(原因疾患)の治療に加えて薬物治療を開始します。残尿が一定量より減らない場合は、定期的な導尿(本人または協力者が尿道からカテーテル・細く柔らかいチューブを膀胱に挿入して尿を排出)を指導します。
単に加齢だけでも膀胱の収縮力が低下して尿勢が低下することもあります。
尿失禁には大きく二つのタイプがあります。切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁です。
切迫性尿失禁は、突然強い尿意を感じてトイレに駆け込まないと尿がちびる・もらすタイプの尿失禁です。考えられる主な病気は過活動膀胱で、男性の場合は前立腺肥大症でも起こります。
腹圧性尿失禁は、ジャンプや咳・くしゃみなどで腹圧がかかった時に、尿意を感じなくても尿が漏れるタイプです。主に中高年の女性にみられ、出産や加齢により膀胱や尿道を支えている骨盤底筋が弱まるため起こります。軽症の場合は、骨盤底筋を鍛え直す体操で改善する場合もありますが、薬や体操で効果がない場合は手術療法(比較的簡単)をお勧めします。
なお、排尿障害(尿が出にくい状態)により残尿が多量となり、尿が膀胱からあふれて漏れる溢流性尿失禁という特殊な尿失禁もあります。溢流性尿失禁は放って置くと腎機能が低下するので、必ず治療が必要です。
排尿するとき痛みがある場合は、膀胱や尿道の細菌感染(膀胱炎、尿道炎)を疑います。
膀胱炎の多くは、細菌(主に大腸菌)が尿道から膀胱内に侵入し増殖しておこる急性膀胱炎です。多くは排尿痛の他に頻尿や残尿感なども伴います。ほとんどの方は抗菌薬治療により速やかに治ります。ただし、膀胱炎や他の感染症で抗菌薬を使用した経験のある方では、細菌が抗菌薬に耐性化している(抗菌薬が効かない)場合があり注意が必要です。なお、膀胱炎を年に何度も繰り返す方は、尿路に何か病気が潜んでいることがありますので内視鏡検査など泌尿器科での専門的な検査が必要です。また、膀胱炎症状に発熱を伴えば腎盂腎炎、男性では急性前立腺炎の疑いが濃厚で、早急な治療が必要です。
なお、膀胱炎症状があるのに抗菌薬が効かない、検尿で異常がみつからないなど通常の膀胱炎とは異なる患者さんでは間質性膀胱炎という特殊な膀胱炎を疑います。この病気は膀胱粘膜のバリアーが損傷しているため、尿が膀胱にたまると尿に含まれる刺激物質で膀胱痛(下腹部痛)が出現し、排尿する(膀胱を空にする)ことにより痛みが軽くなるのが特徴です。診断には膀胱尿道内視鏡検査が必要です。治療には食事指導(刺激物摂取の制限)、内服治療、膀胱水圧拡張術、膀胱内薬物(DMSOなど)注入療法などがあります。
尿道炎は、主に男性が排尿時に尿道の痛みや違和感(ときにかゆみ)などを訴えます。尿道からうみ(膿)が出て下着を汚すこともあります。性風俗や不特定な異性との交渉後に出現した場合は、クラミジアや淋菌による尿道炎(性感染症)が疑われます。いずれも薬物治療が有効ですが、淋菌性が疑われる場合は内服薬では効かないことが多く点滴・注射治療が必要です。
突然、片側の背中や脇腹、下腹部に激しい痛みが出現した場合、尿管結石の可能性があります。内科や外科(消化器系)の病気の可能性もありますが、特に血尿を伴う場合や、過去に尿路結石の経験がある方は泌尿器科への受診をお勧めします。
血尿には、自分の目で確認できる肉眼的血尿と尿検査によって指摘される顕微鏡的血尿の大きく二つに別けられます。
肉眼的血尿の多くでは尿路に病気が潜んでおり、必ず泌尿器科の受診が必要です。血尿に伴い排尿時に痛みがある場合は急性膀胱炎、腹痛や腰痛を伴う場合は尿路結石(尿管結石、腎結石)が疑われます。また、血尿以外の症状が無い場合は膀胱がんや腎臓がんなど悪性腫瘍の可能性があります。血尿以外の症状が無い肉眼的血尿の場合は、超音波検査と膀胱尿道内視鏡検査、CTなどレントゲン検査が必須となります。
尿検査で指摘される顕微鏡的血尿の場合、重大な病気が見つかることは稀ですが糸球体腎炎、IgA腎症や尿路結石、尿路悪性腫瘍などが早期発見されることもありますので、顕微鏡的血尿を指摘された場合は泌尿器科や腎臓内科など専門医の受診をお勧めします。
精液に血液や血液の塊が混じることを血精液症といい、多くは精液の通り道である前立腺や精嚢からの出血です。稀に前立腺がんや前立腺炎、前立腺結石などがみつかることがありますが、大半の方では治療が必要となる病気はみつからず自然に消失します。
陰嚢は腫れているが痛みを伴わない場合、陰嚢水腫と精巣がんが疑われます。まれに精索静脈瘤や脱腸(そけいヘルニア)がみつかります。触診と超音波検査で鑑別できます。陰嚢水腫は水腫液を注射針で穿刺・吸引することにより外来治療が可能です。再発を繰り返す場合は手術療法をお勧めします。
精巣がんの場合は早急な治療が必要ですので、痛みが無くても陰嚢が腫れた場合はためらわずに受診して下さい。精索静脈瘤は主に左側に発症し、男性不妊症の原因の一つとされています。
陰嚢が腫れて痛みを伴う場合は、急性精巣上体炎や精索捻転の可能性が考えられます。急性精巣上体炎は全身の発熱を伴うこともあり、抗菌薬治療が必要です。精索捻転の場合は緊急手術が必要で、放置して精巣が壊死すると摘出が必要になることもあります。
亀頭包皮炎は、包茎のある子供では包皮の内側にたまった尿や恥垢などが刺激になって炎症を来たし、陰茎包皮や亀頭に発赤や痛み、かゆみを起こします。細菌感染を伴うと、うみ(膿)が出てきます。男児疾患のうち、最も多いもののひとつです。炎症を抑える軟膏を塗るか、炎症が強く細菌感染が疑われる場合には経口の抗菌薬を投与します。
大人の男性では、不特定な異性との交渉後に陰茎や亀頭部に発赤(潰瘍)や痛みが出現した場合、梅毒や性器ヘルペスなど性感染症も疑われます。また、陰茎包皮や亀頭に鶏のトサカ、カリフラワー状、乳頭状のイボが出来た場合は尖圭コンジローマが疑われます。
おねしょが、5才以上で、週2回以上、3ヶ月以上続く場合に夜尿症と定義します。夜尿症の原因は、①夜間多尿(水分摂取過多、夜間の抗利尿ホルモンの分泌低下)、②膀胱容量の低下、③覚醒障害など様々です。それぞれの原因に対応した治療が選択されます。具体的には①生活指導、②行動療法(アラーム療法)、③薬物療法(抗利尿ホルモン、抗過活動膀胱薬)などです。
PSA(前立腺特異抗原)とは、前立腺がんを早期に発見するための血液検査(腫瘍マーカー)です。50才以上の男性では定期検査が勧められます。異常値(50-64才:3.0ng/ml以上、65-69才:3.5以上、70才以上:4.0 以上)を指摘された場合は泌尿器科での精密(二次)検査が必要です。画像検査(MRI)や組織検査など追加の検査が必要となることがあります。
前立腺がんと診断された場合、ご家族と一緒に治療方法を相談させて頂き、手術療法、放射線療法を選択された場合はご希望の病院を紹介させて頂きます。また、内分泌療法を選択された場合は、当院で治療可能です。
勃起機能が低下することを、英語でErectile Dysfunction(略してED)といいます。
勃起しない、勃起が弱くて性交できない、勃起が持続せず中折れする、期待した硬さにならない場合もEDです。専門的には「性交時に十分な勃起やその維持ができず、満足な性交が行えない状態」と定義されています。
EDの原因は、加齢、糖尿病や高脂血症など生活習慣病、神経・血管障害、心因性、薬剤性など様々です。当院ではEDの原因を精査し、患者さんの病態に合った治療法を選択しています。具体的には、カウンセリングや原因疾患の改善、バイアグラ®やレビトラ®、シアリス®など内服薬治療に加えて海綿体自己注射による治療で症状の改善を目指しています。
射精障害(射精不能、早漏、遅漏、膣内射精ができない、等)も原因を確かめ、薬や器具、心理療法で治療します。また、薬剤の副作用で生じている場合は、その原因薬を確かめて中止すれば回復します。
男性更年期障害:LOH症候群とは、加齢に伴う男性ホルモンの減少が原因で、うつ傾向、体がだるい、不眠、イライラや不安感が強い、ひどい発汗、筋力の低下、骨がもろくなった(圧迫骨折)、勃起しない、性行為ができないなど様々な症状を呈するようになった状態です。近年では社会に認知されるようになり、男性更年期障害と診断される患者さんは増加傾向です。
これらの症状が続き、血液検査で男性ホルモン値の低下が確認された場合、男性ホルモンの補充療法の適応となります。通常2~4週毎に男性ホルモンを筋肉注射します。なお、挙児希望ある方や前立腺がんが疑われる方(PSA前立腺がんマーカーが2ng/ml以上)ではホルモン補充療法は行えません。